トラックに轢かれた訳ではなく、ブラック企業の鬼残業による過労で倒れた訳でもなく、ただただ正月に食べた餅で喉を詰まらせて死んでしまった山川光は、ふとした事から異世界へと転生する事になった。
神力を使い果たした女神からは流行りのチートはもらえなかった。鑑定もアイテムボックスも転移魔法も何ももらえなかった。
このままではせっかくの異世界もただのモブで終わってしまう。光はリターンを得る為にリスクと言う名の命をかける事で異世界を生き抜いて行くのだが・・・
「これ、かなりの無理ゲじゃね?」
前世の知識を総動員して、死なない為に、光は今日も努力を続ける・・・
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第25話 勇者を探すヒカル
アルムガルド魔法学校の入学式に来たヒカルとメイリーンはクラス発表を待ちながら魔法学校のグラウンドで時間をつぶしていた。そして、時間を潰していていると、辺境の地エベレスで一緒に勉強したエベレス辺境伯の娘、スクルドと再会した。
再会を喜びあった後、ヒカル、メイリーン、スクルドの3人はクラス発表の時間まで3人で時間を潰した。ヒカルとスクルドはエベレスから離れてからのお互いの事を話しあい、メイリーンはそんな二人をうらやましそうに見つめていた。
(何よ。ヒカルそんなにうれしそうに話しちゃって。そりゃ久しぶりなのはわかるけど、私もここにいるんですけど。スクルドもスクルドよ。私のヒカルにあんなに近づいて。ま、まあいいわ。私はヒカルと一緒に住んでるのよ。同棲よ同棲。あなたがどれだけ親しそうに話したって私の方が一歩も二歩もリードしてるんだからね。)
そうして、3人で時間を潰していると、グランドにある木の板にクラス分けの紙が貼られた。かなり良い位置で場所取りをしていたので、ヒカル達は張られた紙を正面から見る事が出来た。
そこには・・・
Aクラス
アインシュタイン
アメリア
スクルド・エベレス
・
・
メイリーン
ヒカル
・
・
と名前が載っていた。
「「ヒカル!私とヒカル。どっちもAクラスよ。」」
「「えっ!?」」
メイリーンとスクルドの言葉が見事に重なった。
(いやいやメイリさん、スクルドさん。そこは3人ともAクラスだよ。でいいじゃんか。何そのマウントの取り方・・・てか被ってるし。まあとりあえずAクラスには入れたな。Aクラスに勇者が居ればいいけど・・・)
クラスを確認したヒカル達は、入学式があるホールへと移動した。入学式はホール内で行われた。学園長によるお祝いの言葉や生徒会長による話など1時間みっちりと入学式は行われた。
(偉いさん方の話ってなんでこう長いんだろうな・・・しかも何言ってるか全くわからないし・・・たしか入社式でも社長の意味の分からないクソ長い話をぼーっときいてたっけ。)
入学式が終わり、ヒカルとメイリーン、スクルドの3人はAクラスの教室へと移動していた。初日は入学式とクラスでのホームルームだけなので、午前中で終わる予定だった。
(さてさてAクラスに勇者はいるかな。爽やかイケメンで平民っていうのが定番だよな。爽やかイケメン、爽やかイケメンっと。)
ヒカル達が教室に入ると、席が30あり、半分くらいは席がうまっていた。どうやら入った順で前から座っていっているようで前半分が見事に埋まっており、後ろ半分は2人が席に座ってるだけだった。
(いやいやこの世界の人ってどれだけ意識高い系なんだよ!普通自由席なら後ろとか目立たないところに座るのが普通だろ。前半分完全にうまってるじゃん!?)
「ゆっくりしすぎたわね。前の方の席はうまっちゃってるわ。」
「私はヒカルの隣ならどこでもいいけどね。ヒカル。空いてる席に座りましょ。」
そう言ってメイリーンはヒカルの手を取り、二人並んで座れる席へ向かっていく。結果、一番後ろの席で、ヒカルの左隣にスクルド、右隣にメイリーンの席並びになった。
すると早速、スクルドとメイリーンに人が寄ってきた。
「僕はサイラスって言うんだ。よかったら仲良くしてくれるとうれしいな。かわいいお嬢さん方。」
(いやいや俺、間にいるんですけど。俺には声かけずにスクルドとメイリーンに声かけるってどうなのよ?それに、見た目はイケメンだけどいきなり声かけるとかチャラ男だな。チャラ男の相場は悪役系か友達系かで分かれるけど、友達系なら俺に話しかけてるから悪役系だろうな。って事はコイツは勇者じゃないな。)
サイラスの言葉をスクルドとメイリーンもサラッと交わしていた。サイラスが必死に話しかけるが2人とも無視していた。そんな事をしていると席がうまり、前の壇上に先生と思われる人が入ってきた。
「みんな揃ってるわね。じゃあさっそくホームルームを始めるわね。まずは私ね。私はこのAクラスの担任をするシルヴィアよ。専門は魔法学ね。魔法については貴方達よりも断然詳しいから何かあったら何でも聞いてきてね。」
(シルヴィア先生か・・・銀色の長髪って綺麗だな。それにスタイルも良い。担任の先生が綺麗だとやる気出るよな。俺の高校時代なんか担任は白衣来たオタクっぽい化学の先生かゴリマッチョの体育の先生が担任だったからな~。うん。Aクラスになれてよかった。1年間がんばれそうだ。)
「それじゃ今日は自己紹介をして、その後に明日からの授業の説明をして終わりますね。左端の子から準備にお願いね。」
(きたきた自己紹介タイムだ。勇者を探さないとな。爽やかイケメン。爽やかイケメン・・・。あっ俺も自己紹介しないといけないんだ。どうしよ・・・。名前とよろしくお願いします。ぐらいしか言えないぞ・・・)
そして、無事に自己紹介タイムが終わり、明日からの授業の説明もスムーズに終わりを迎えた。
(ふう。何とか乗り切ったな。それに・・・勇者の目星もつけれた。安直かもしれないけど、アルスとロランなんていかにも勇者って感じの名前だし。ネメシス様ならありえるよな。アルスはまんま爽やかイケメンって感じだしな。ロランの方は無自覚系主人公って感じの素朴な感じが勇者をにおわせるんだよな~。多分どっちかが勇者だと思うし早い内に仲良くなって置かないとな。)
そうして、勇者の目星をつけたヒカルは、魔法学校初日を無事に終えるのだった。
第26話 目星の勇者に話しかけるヒカル
「ヒカルはこの後、寮に行くの?」
「えっ!?それは・・・」
「あらスクルド。私とヒカルは寮には入らないわ。さすがに毎月金貨5枚は私達には厳しいからね。」
「えっ!?そうなの?じゃあどうやって通うの?」
「安い借家を見つけたの。私とヒカルは今そこに住んでるのよ。」
「ヒカルと!?2人で!?ちょっとヒカル。どういう事?」
(いやいやメイリさんや。絶対わざとでしょ。スクルドがこうなるってわかってたよね?)
「スクルド。落ち着いて。」
「だって同棲してるって事でしょ!?落ち着いてなんかいられないわ。」
「そうよスクルド。私達は一緒に暮らして、一緒に学校まで来て一緒に帰るの。寝る時だって・・・まあ一緒に暮らしてるからそんな感じよ。」
「一緒に寝てるの!?」
「メイリ。ちゃんと説明しないとスクルドが誤解するだろ。いやいや部屋はちゃんと2つあるよ。寝るのはもちろん別の部屋だ。」
「信用できないわ!そうよ。今から家を見に行くわ。ヒカルとメイリがちゃんと生活してるか心配だし、どこに家があるのかも知っておきたいし。」
「えっ!?来るの?」
「もちろんよ。何?私が行ったらダメなの?そんな事ないわよね?」
「う、うん。もちろん大丈夫だよ。」
「なら早速行きましょ。」
(俺何してるんだろ・・・折角アルスとロランに話しかけて友達になろうと思ったのに・・・初日から躓いてるじゃん。は~。明日からも気が重いな・・・)
スクルドはヒカルとメイリが住む家までついてきて、二人が別々の部屋で寝ている事を確認すると、安心したのかそのまま帰って行った。
(よかった。何事もなく帰って行ったよ。泊まっていくとか言われたら困ったもんな。いやでも家の場所が知られたから朝迎えに来るとか無いよな・・・。あるわけないか。スクルドって上級貴族の娘さんだもんな。今日は歩いてここまでついてきたけど基本馬車での通学だよな。うん。切り替えてアイテムボックスの検証でもしよう。)
スクルドが帰り、食事などを終えて部屋に戻ったヒカルは、ミッションクリアで手に入れたアイテムボックスの検証を行っていた。
(なるほど。手に触れていればアイテムボックス中に入れる事ができるんだな。そして取り出しも自由っと。とりあえず今日はお湯を入れておいて明日の朝、温度がどうなってるかは検証しないとな。容量はとりあえず今は検証できないからドンドン入れて行って調べるしかないな。)
そして翌日・・・
「おお!!湯気が出たままだ。って事は時間停止確定だな。これで食事の心配事がなくなったのは大きいな。アイテムボックスに入れてれば干し肉と固い黒パンでの生活とオサラバだな。」
「ヒカル~。」
「起きてるよメイリ。ちょっと待って!!」
「えっ!?なんで起きてるの?」
(いやいやメイリさんや。そのやり取り昨日したじゃん。俺も学んだからね。メイリに起こしてもらうと危険だなって事を。)
準備を終えたヒカルとメイリーンは魔法学校へと向かった。その道中・・・
「えっヒカル。アイテムボックス使えるようになったの?」
「うん。なんか魔力操作の練習してたらいつの間にか使えるようになったんだ。」
「すごいじゃん。アイテムボックス持ってたら魔物とかも狩り放題だね。お金もドンドン稼げるじゃない。」
「それだけじゃないよ。調べてみたけどアイテムボックス内は時間が経過しないみたいなんだ。だからご飯とか作ったヤツを入れておけばいつでも温かい料理が食べれれるよ。」
「本当!?それはすごいね。じゃあ私がどんどん作ってヒカルのアイテムボックスに入れれば夜営とかしても安心だね。」
「そうそう。それにテントとかも準備できるしね。」
「じゃあ学校が休みの土曜日、日曜日は泊まりで出かけてもよさそうね。」
「そうだな。その辺もこれから考えて行かないとな。」
そんな話をしながら魔法学校に到着したヒカルとメイリーンはAクラスの教室に入り、昨日と同じ席に着いた。昨日座った席が定位置へと自然に決まっているのか入ってくる人、入ってくる人昨日と同じ席に座って行く。
(まだ始まるまで時間があるし、話しかけてみるか。積極的に話しかけるような陽キャじゃないけどこればっかりはしょうがないよな。なんといっても勇者が2年になれなかったら俺死ぬもんな。とりあえずロランにしよう。話しかけやすそうだ。)
「おはよう。たしかロランだったよな。俺はヒカル。同じAクラス同士よろしくな。」
「ヒカル君?うん。こちらこそよろしくね。」
「ロランは一人で座ってるけど、ここには一人で来たのか?」
「うん。僕がいた村は田舎だからね。みんなが僕の為にお金を集めて送り出してくれたんだ。だからまだ全然友達もいないんだ。」
「まあ俺も似たようなもんかな。俺は孤児院出身だけどな。よかったら俺と友達になってくれないか?」
「うん。もちろんだよ。こちらこそよろしくね。」
(ヨッシャー!がんばったかいあって友達になろう作戦成功だ。ナンパもしたことない俺だったけど案外うまく行くもんだな。それに田舎出勤の素朴な少年ってメッチャ勇者っぽいし。)
そうしてヒカルは、無事に勇者???と友達になったのだった。
カクヨム300万PVの『異世界転生にチートは必須だよね』を読む
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