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勇者に魔王を倒させろ!第十七話&第十八話

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勇者に魔王を
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トラックに轢かれた訳ではなく、ブラック企業の鬼残業による過労で倒れた訳でもなく、ただただ正月に食べた餅で喉を詰まらせて死んでしまった山川光は、ふとした事から異世界へと転生する事になった。

神力を使い果たした女神からは流行りのチートはもらえなかった。鑑定もアイテムボックスも転移魔法も何ももらえなかった。

このままではせっかくの異世界もただのモブで終わってしまう。光はリターンを得る為にリスクと言う名の命をかける事で異世界を生き抜いて行くのだが・・・

「これ、かなりの無理ゲじゃね?」

前世の知識を総動員して、死なない為に、光は今日も努力を続ける・・・

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第17話 Dランクになったヒカル

辺境伯の娘スクルドを助けてからヒカル達の生活が大きく変わった。

金貨50枚という大金を貰った事で生活に余裕が出来たのだ。今までは必死にお金を貯める必要があったので、もう少し、後1体、というように、無理をしていた。

それかまなくなった事でより安全に毎日を過ごす事ができていた。

毎日毎日金貨袋を眺めては、「貯金かな〜。マジックバッグ、それとも装備品?どうしよ?どうしよ?なんでも買えるな。」とニヤニヤしながら使い道を考えるのが日課になっていた。

もう一つの大きく変わった点は図書館だ。ヒカルとメイリーンが勉強している所にスクルドが来て一緒に勉強するようになったのだ。と言っても毎回ではない。

二人で勉強しているとふらふら〜っと現れるのだ。その為、ヒカルの対面に座っていたメイリーンがヒカルの横に座るようになった。スクルドが現れたら移動するならよかったのだが、メイリーンは、スクルドが来ても、来なくてもはじめからずっとヒカルの横に座るようになった。

4人掛けのテーブルに二人並んで横に座って勉強するヒカルとメイリーンは色んな目を向けられていた。メイリーンは気にしてなかったが、ヒカルは人の目が気になり、勉強に身が入らなくなっていた。

しかし、悪い点ばかりではなかった。スクルドはさすが貴族の御令嬢。ヒカルやメイリーンよりも勉強内容が進んでいて、入学試験対策もしっかりしていたので、スクルドに教わる形で、合格確率が大きく上昇したのだ。

更に中級魔法を一つでも使えると合格しやすいとの事で、スクルドのおかげで中級魔法の魔法書も読めるようになった。

スクルドは風の中級魔法を勉強中だったので、ヒカルは火を、メイリーンは水の中級魔法をそれぞれ勉強するようになった。

中級魔法は詠唱を覚えるだけでは発動しない。理論を理解し、初級魔法を何度も使い魔法の練度を高めなければ習得する事はできない。

なかなか覚えれない中級魔法には苦労したが、ヒカルとメイリーンが11歳になったタイミングでどちらも無事に中級魔法を覚える事ができた。

(長かった〜。前世もビックリなぐらい勉強したぞ。でもようやくだ。スクルド様々だな。あの時スクルドを助けてなかったらこううまくはいってなかった。感謝しかないな。)

(それに、メイリにも感謝だな。メイリがいなかったらきっと貰った金貨使ってたからな。この辺は前世から変わらないな。給料貰ったその日に欲しかった限定フィギュア勝って、お金なくなって親に借金という建前でお金貰ったっけ。良い思い出だな。)

(まあ図書館で隣に座ってくるのはちょっと困るけど、スクルドに対抗してるのが見え見えでちょっと可愛いんだよな。魔法学校でも一緒になるだろうから仲良くしてくれればいいんだけど・・・)

「ありがとうスクルド。スクルドのお陰でなんとか魔法学校に入れそうだ。」

「私もヒカルとメイリのお陰で楽しく勉強できたのでよかったですわ。できれば学校でも同じクラスになりたいですね。」

(スクルドに学校の事も色々教えてもらえて助かったな。入学試験の結果でクラスが分けられるならなんとしてもAクラスに入っておきたい所だ。勇者って言うぐらいだ。きっとAクラスに来るはず。同じクラスの方がサポートもしやすいよな。)

「そうだな。できればお互いAクラスになりたい所だな。俺達はまだまだだからもうちょっと頑張らないといけないけどな。」

「うん。私も頑張って勉強してAクラスを目指すよ。」

(ヒカルと一緒のクラスに絶対なるんだから。スクルドには負けないよ。)

「明日からはダンジョンに行くの?」

「ああ。折角Dランクに上がったんだ。メイリもダンジョン行きたがってたし、それにもっと金を稼がないとな。Aランクで入学するのも大事だけど、入って早々、寮のお金が払えなくて退学とか洒落にならないからな。」

(寮の事はうっかりしてたな。全く考えてなかったよ。まさか学生寮に入ったら毎月金貨5枚かかるなんて・・・このままじゃ入学できても1,2か月で退学だ。最低でも半年分の金貨30枚、二人で60枚は貯めておかないと。)

「うん。ダンジョン行って宝箱見つけよう。」

(寮か・・・きっと男子寮と女子寮があるよね・・・。ヒカルと離れ離れになるのはいやだな・・・。王都で家を借りたら、ヒカルと暮らしながら一緒に登校できるんじゃ・・・。うまくヒカルにおねだりしなきゃ。)

(う~。なんかメイリがブツブツ不穏な事言ってるよ・・・。うん。聞かなかった事にしよう。よしそうしよう。)

ヒカルとメイリーンは先日、冒険者ランクがEランクからDランクに上がっていた。学校入学までは後1年、試験までは9ヶ月しかない。ミッションをクリアしないとその時点でヒカルは死んでしまう。

厳密に言えば入学さえしてしまえば、その後退学してもミッション失敗とはならない。ミッションは勇者の進級にしか触れてないからだ。だがその事にヒカルはまだ気づいていない。

死を回避する為にヒカルは、メイリーンと共にお金を稼ぐ為、ダンジョンへと向かうのだった。

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第18話 ダンジョンに入るヒカル

マウンテンリバーの世界にはダンジョンが存在する。ラノベでよくあるアレだ。

ダンジョンは不思議空間である。魔物はいるが、倒すと消えてしまい魔石とドロップアイテムを落とす。魔石はダンジョンからしか手に入れる事ができないので、ダンジョンに行く冒険者は多い。

(ダンジョンか〜。魔物を倒しても解体しなくていいのは楽だよな〜。魔石だけならけっこうな数持って帰れるだろうし半年ぐらいはダンジョンをメインにしてもいいな。)

「ヒカル。早く早く。早くしないと宝箱取られちゃうよ。」

(いやいやメイリさんや。俺達みたいな低ランク冒険者が宝箱とか難しいと思いますよ。泊まりでいける訳じゃないから深い所まで行ける訳じゃないし・・・)

ヒカルとメイリーンは、駆け足でダンジョンに向かった。ダンジョンの入り口にはゾロゾロと冒険者が列をなしていた。

その周りでは屋台で食べ物を売ったり、パーティーメンバーを募集したりと賑わっていた。

「すごい!人がいっぱいだよ。」

「ああ。」

(なるほどなるほど。荷物持ちとかを雇ってダンジョンに行く人もいるのか。確かに荷物が多いと戦闘も大変だもんな。)

「メイリ。ダンジョンの地図が売ってるみたいだ。念の為買っておこう。」

そう言って、ヒカルはダンジョンの1階から3階までの地図を買い、ダンジョンへと入っていった。

大勢の冒険者がいて絡まれるかも?と思ったヒカルだが、なんだかんだでエベレスで半年以上活動していたので、知ってる冒険者もいたりしたので、問題なくダンジョンに入る事ができた。

(道に迷ったら大変だからな。出られなくなったら命に関わるしこの出費はしょうがないだろ。誰も言ってはくれないけど、ここは命を大事に!だ。)

「倒したら消えちゃうのは不思議だね。」

「そうだな。でもまあ魔石を残してくれるし解体する手間を考えたらありがたいけどな。」

「でもゴブリンはやっぱりゴブリンだね。こんな腰蓑ドロップしても全然うれしくないよ。」

「たしかに。臭くて手に取りたくないし、燃やすしかないもんな。使い道のないドロップアイテムなんて嫌がらせもいいとこだな。」

ダンジョンに入ったヒカルとメイリーンは出てくる魔物を倒していた。1階に出てくる魔物はゴブリンだった。強さは森で戦った時と変わりなく、メイリーンの剣と、ダンジョン内なら火魔法を使っても周りに被害がないので、ヒカルの火魔法で一撃だった。

事前の情報通りゴブリンは死ぬと、その場で消えて行った。そしてビー玉ぐらいの小さな魔石を残した。更に一定確率でドロップアイテムを落とす。ゴブリンの場合は腰蓑だ。だが腰蓑はギルドで買い取ってもらえない。放置しておく事もできないで、ドロップアイテムを落とす度に、ヒカルの火魔法で燃やしていた。

その後もヒカルとメイリーンはダンジョンの魔物を倒しては魔石を集め、腰蓑を燃やし続けた。

「とりあえず今日の所はここまでにしようか。魔石はまだまだ袋に入りそうだけどMPがきつくなってきた。」

「わかった。MPポーション飲むのもったいないもんね。」

(ビー玉サイズの魔石ならまだまだ入るけど、ゴブリンの腰蓑は予想外だったな。あれの処理で無駄に火魔法を使わなかったらまだまだ金稼ぎできるんだけど・・・これはちょっと考えないとな。)

ダンジョンを出たヒカルとメイリーンはその足でギルドに向かい魔石を売却した。その日の稼ぎは過去一番となり、ヒカルとメイリーンは大いに喜んだ。もちろん御祝い事だ。いつものように宿の食事じゃなく、小料理屋で豪勢な食事を楽しんだのは言うまでもない。

その後もヒカルとメイリーンは毎日ダンジョンに行き続けた。毎日といっても休みなく行くわけではない。ダンジョン、ダンジョン、休み、ダンジョン、ダンジョン、休みという繰り返しだ。深い階にはいかずひたすら命を大事に作戦を続けていたため、レベルは思うように上がらなかったが、半年で、金貨50枚貯める事に成功した。

もちろん、エベレス辺境伯からもらった金貨50枚にも手を付けていないので合計金貨100枚だ。

ヒカル
レベル12

HP120 MP400
筋力 114
魔力 210
敏捷 114
耐久 114
精神 140

恩恵:異世界言語・全魔法適正・成長補正極大
適正:全属性

メイリーン
レベル12

HP60 MP150
筋力 60
魔力 80
敏捷 50
耐久 52
精神 70

適正:水・光

(レベルは思った程上がらなかったけど、ゴブリンとかコボルトばっかり倒してたからしょうがないか・・・死にたくないもんな。金貨は100枚貯まったし40枚の入学資金を払っても60枚残る。寮は食事付きで月5枚だから2人でも半年はなんとかなるな。学校に入ったら今までのように冒険者で金を稼ぐのは難しくなるだろうから王都でどうやってお金を稼ぐか考えないとな。)

(とりあえず魔法学校に入学すればアイテムボックスが使えるようになるから、それをうまく使ってなんとかするしかないな。勇者も探さないといけないしまだまだやる事はたくさんあるな。まずは早めに行って王都を見てみないと。まあ今日は100枚貯まった記念だ。オーク肉祭りだな。)

目標を達成したヒカルは、エベレスを離れる事を決めるのだった。

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