トラックに轢かれた訳ではなく、ブラック企業の鬼残業による過労で倒れた訳でもなく、ただただ正月に食べた餅で喉を詰まらせて死んでしまった山川光は、ふとした事から異世界へと転生する事になった。
神力を使い果たした女神からは流行りのチートはもらえなかった。鑑定もアイテムボックスも転移魔法も何ももらえなかった。
このままではせっかくの異世界もただのモブで終わってしまう。光はリターンを得る為にリスクと言う名の命をかける事で異世界を生き抜いて行くのだが・・・
「これ、かなりの無理ゲじゃね?」
前世の知識を総動員して、死なない為に、光は今日も努力を続ける・・・
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第7話 魔法学校に行くために奮闘するヒカル
「なんて事だ・・・」
魔法学校に行く事を決めたヒカルとメイリーンは、
そもそも魔法学校がどこにあるのか?
どうやって入るのか?
いくらかかるのか?
試験はあるのか?
など全く知らなかった。なので、孤児院にある本やギルドにある資料、シスターモネに聞いて情報を集める事にした。
大きな町にいけば本が置いてある図書館などもあるだろうが、イッパンの町にそんな場所はなかった。孤児院にある本も子供向けの本ばかり、ギルドにある資料は魔物とかスキルなどの冒険に役立ち資料ばかりであまり知りたい事を知る事は出来なかった。
ヒカルとメイリーンは困った時のシスターモネに魔法学校に行きたいという事を告げ、知っている事を教えてもらう事にした。
そして、この世界の事を教えてもらった。
このマウンテンリバーには4つの大国がある。
ヒカルがいる国がアルムガルド王国。
獣人やドワーフ、エルフがいるフリーダム連合国。
神の国と呼ばれる宗教国家ホワイト。
強さこそ正義のスタローン帝国。
そして、魔法学校はそれぞれの王都にあるらしい。
ヒカルのミッションは魔法学校に入学して、勇者をサポートする事だ。だが、ここでヒカルは気づいた。どの魔法学校に勇者が入学するのかわからない。という事に・・・
(やばいぞやばいぞ。魔法学校に入学できればとりあえず次のミッションはクリアできる。だけど、勇者がどの魔法学校に入学するのかわからないと、進学のサポートができないじゃん。てか俺って勇者の顔も知らないんだけど・・・。勇者ってそもそも何処の誰なんだ?有名人なのか?)
「シスターモネ。俺達が行くならアムスガルドの王都にある魔法学校だと思うんだけど、そこって誰でも入れてくれるのかな?」
「そうね。試験自体は誰でも受けれると思うわ。ヒカルとメイリは今10歳だから2年後の12歳になったら試験は受けれるわ。だけど試験に合格するのは難しいわよ。筆記試験に実技試験もあるのよ?ヒカル。あなた勉強苦手でしょ?」
「うっ・・・それは・・・」
「それに試験に合格しても入学するのにお金もかかるわ。確か・・・金貨20枚だったかしら。」
「金20枚・・・」
(俺達がやってる薬草採取が10束で銅貨50枚、金貨20枚集める為には、薬草採取なら1、10、100・・・400回分。いやメイリと2人だから800回分。2年頑張ればお金の方はなんとかなるか。いや宿のお金や装備のお金もかかるんだ。そんな単純な話じゃないか。でもレベルを上げれば報酬の良い依頼も受けれるだろうし・・・)
「シスターモネは詳しいんですね?」
「そりゃ私はそこの卒業生だからね。」
「「!?」」
「何を驚いてるのよ。私だって昔はすごかったのよ。」
(魔法もやさしく教えてくれたし、無詠唱魔法も使える。シスターモネってすごかったんだ。やっぱり困った時のシスターモネだな。これからは困ったらモネえも~んって頼るとしよう。もしかしたら王都まで一瞬で行けるピンクのドアを出してくれるかもしれない。)
「ライト・・・大丈夫かな?金貨なんて大金、私持ってないよ・・・」
「大丈夫だメイリ。冒険者してればお金はきっと稼げるよ。まだ2年もあるんだ。何とかなる。いや、俺が何とかするよ。」
「ライト。」
(ふふふ。若いっていいわね。それにライトもメイリも才能はあると思うから頑張れば魔法学校にも入れるでしょうね。)
「シスターモネ。俺達は魔法学校に行きたい。お金は冒険者をやって稼ごうと思うけど、試験の事が全くわからない。その辺の事を教えてくれませんか?」
「もちろんいいわよ。そうね。朝は色々仕事が忙しいから、晩御飯前に勉強するのはどうかしら?」
「うん。お願いします。」
(とりあえず魔法学校に入学する為にしないといけない事はわかった。勇者がどこに入学するのかはわからないが、他の国の魔法学校に入学するのはさすがに無理だから、この国に勇者がいるのを祈るしかないな。は~ネメシス様にもっと色々聞いておくんだった・・・)
その日からライトの日常は更に忙しくなった。
朝起きて冒険者ギルドに行き、魔物討伐の依頼を受けて魔物を倒し、お金と経験値を得る。もちろん魔力操作をしながら。
孤児院に戻ったら、魔法学校に入る為の学科と実技の勉強をする。
寝る前は、生活魔法を使ってMPが無くなるまで魔法を使い、MPを増やす。
ライトは死にたくないので、毎日毎日必死に努力した。
そして3カ月が経った。
「とりあえず私が教えれる事は全部教えたわ。ライトもメイリもちゃんと努力したから早かったわね。ここで教えれる事がなくなったから、エベレスの町に行くといいわ。あそこなら図書館があるから、ここよりも色んな事を知れると思うわ。」
「ありがとうシスターモネ。辺境の町エベレスに行って、王都行きの馬車に乗るんだったよね。俺がんばるよ。」
「シスターモネ。ありがとうございます。私も魔法学校に入れるように頑張ります。」
(モネえもんの言うように、イッパンの町をそろそろ出てもいい頃だな。資金にも余裕が出て来たし俺のレベルも5まで上がったしな。学校に入学するまでには、もっと強い魔法も覚えておきたいし。)
ヒカル
レベル5
HP50 MP200
筋力 44
魔力 100
敏捷 44
耐久 44
精神 50
ヒカルとメイリーンは翌日、イッパンの町を離れ、辺境の地エベレスへと向かうのだった。
第8話 辺境の町エベレスに向かうヒカル
ヒカルとメイリーンは魔法学校に行くためにイッパンの町を離れる事を決めた。今日は旅立ちの日だ。
「ヒカル忘れ物はない?武器は持った?食料も大丈夫?」
「大丈夫だよ。ちゃんと準備してるから。」
「メイリも大丈夫?」
「大丈夫よシスターモネ。」
ヒカルとメイリーンは孤児院の人達に見送られながらイッパンの町を出た。
「エベレスまでは1週間ぐらいよね?」
「ああ馬車で3日の距離って言ってたから歩きだと1週間ぐらいだろ。」
「本当に馬車に乗らなくてよかったの?」
「少しでも節約しないとな。それに道も1本道だから迷う事もないし。」
「護衛依頼とか受けれたら移動しながらお金も稼げたのにね。」
「それはしょうがないさ。俺達の冒険者ランクはFだぜ。この前ようやくGからFに上がったばかりなんだ。Fランクの冒険者に護衛を依頼するようなモノ好きなんていないだろ。」
ライトとメイリはこの日の為に色々と準備していた。夜営する事になるので、泊まりで魔物討伐に出かけたり、簡単な料理を作れるようにシスターモネに料理を教わったり。
今は2人とも大きめのリュックに荷物がパンパンに詰まっていた。と言ってもリュックの中身は簡単な調理道具に寝る時の毛布、それに1週間分の食料と、もしもの時用のポーションが入っているだけだ。
「エベレスってどんな町かな?」
「どうだろ?図書館があるぐらいだから大きい町なんだろうけど全然想像できないな。」
「人もいっぱいいるよね?」
「そうだな。」
そんなたわいない話をしながら、道中魔物を見つけては魔法で倒しながら進んで行った。もちろんMPはたえず気を付けながら・・・
「メイリ。そろそろ暗くなってきたし今日はここで休もうか?」
「わかった。じゃあ料理はどうする?」
「ああ俺がするよ。メイリは先に身体を洗ってくれていいぞ?」
「そう?じゃあお言葉に甘えるね。水を出すから温めてもらっていい?」
「わかった。」
(お湯で身体を拭けるのはありがたいよね。始めは熱すぎたり、桶を破壊したりと苦労したけど今なら慣れたもんだもんな。それに鳥すらさばいた事なかったのに、今ではスモールラビットの皮を剥いで内蔵を取り出して丸焼きにできるまでになったもんな。やってみれば案外できるもんだよな。)
ライトはメイリが出した水桶にファイヤーボールを放った。まだ無詠唱では火を出す事は出来なかったが、大きさを意識しながら詠唱する事で出る魔法のサイズを変える事ができるようになっていた。
ライトは手際よく、食事の準備をしていく。石で場所を作って木を組んで火をつける。もちろん威力を弱くしたファイヤーボールだ。火の生活魔法は存在しない為、普通は火付け石を使うのだが、ライトはファイヤーボールで火をつけた。
火がつくと鍋に水を張り火にかける。それに固形スープの素を入れればスープは完成だ。固形スープの素と言ってもコンソメスープのようなシャレたものではない。出来上がるのは、野菜のくずが入った塩味スープだ。
(塩味しかしないスープにも固いパンにも慣れてしまったな。早く塩以外の調味料がほしいぜ。胡椒があれば最高なんだけどな。せっかくのウサギ肉なのに、塩だけじゃあな〜。欲を言えばパンだって柔らかいパンが食べたい・・・。)
そんな事を思いながらスモールラビットを解体し火にかける。
(味はともかく、お腹いっぱい食べれるのは救いだな。)
メイリと交代して、ライトも身体を洗い二人で食事をする。食事が終われば後は寝るだけだ。
と言っても一緒に寝る訳ではない。ここは魔物溢れる異世界だ。見張りも立てずに寝ていると朝には魔物のお腹の中なんて事がざらにあるからだ。
「どっちから見張りする?」
「俺からするからメイリは先に寝てていいよ。」
「りょ〜か〜い。」
そう言ってメイリーンはその場で毛布にくるまった。ライト達はテントを持っていなかった。いや正確には、テントを持って来なかった。
(は〜。異世界なら夜営はテントでって思ってたけどあんなもん担いで移動してたら夜までもたないわ。テントがあんなに重いとは・・・。)
そう。キャンプをした事がある人ならわかるだろう。簡易的なモノだろうがテントはとても嵩張るのだ。カプセルをプチっと押して投げたらコテージが出てくるような便利なアイテムなんか存在しなかった。
(コーヒーでもあればゆっくり見張りもできるんだが・・・スマホもマンガもない世界ってみんな見張り中は何してるんだろ?)
そんな事を考えながら、ライトはひたすら魔力操作の練習をしながら時間を潰した。いきなり魔物が襲ってくる可能性もあるので無駄にMPを使う事もできない。
コーヒーもなければ、紅茶も持っていないので火をずっと眺めて癒されるような、一人キャンプも出来ない。
できる事は、ぼ〜っと火を眺める事か、魔力操作だけだった。
(魔法学校に行く為に金は必要だけど、生活の向上にもお金を使わないとな。せっかくの異世界なんだ。楽しまないと損だもんな。まあその為には、地道な努力だな。は〜。魔力操作がんばるか。)
途中、見張りをメイリーンと交代しライトは眠りにつく。何かあればすぐに起きないいけないので旅の間は寝る前のMP消費作業も出来なかった。
そんな旅を1週間続けて、ライト達はようやく目的のエベレスの町へと辿りついたのだった。
カクヨム300万PVの『異世界転生にチートは必須だよね』を読む
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