トラックに轢かれた訳ではなく、ブラック企業の鬼残業による過労で倒れた訳でもなく、ただただ正月に食べた餅で喉を詰まらせて死んでしまった山川光は、ふとした事から異世界へと転生する事になった。
神力を使い果たした女神からは流行りのチートはもらえなかった。鑑定もアイテムボックスも転移魔法も何ももらえなかった。
このままではせっかくの異世界もただのモブで終わってしまう。光はリターンを得る為にリスクと言う名の命をかける事で異世界を生き抜いて行くのだが・・・
「これ、かなりの無理ゲじゃね?」
前世の知識を総動員して、死なない為に、光は今日も努力を続ける・・・
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第19話 王都に到着するヒカル
辺境の町エベレスから移動する事1カ月、ヒカルとメイリーンは王都アルムガルドに到着していた。入口で身分証のDランク冒険者証を提示し、中に入る2人。
「エベレスも大きかったけど、ここはそれ以上だね。」
「ああ。王都って言うぐらいだから一番でかいんだろうな。とりあえず宿を探そうか。」
(ようやく王都についたな。試験までは後2か月それまでは試験対策をメインにして、合格したとして、入学までの3カ月で更にお金を稼がないとな。あとは勇者の情報だな。魔法学校に入学するミッションをクリアしたら次は勇者を2年生に進級させろだったから早めに勇者を見つけて仲良くなっておかないと。)
「学校に近い所がいいかな?」
「そうだな~。先にギルドでその辺聞いてみるか。便利な所は高いだろうし、なるだけ節約したいからな。」
「そうだね。わかった。」
ギルドは盾と双剣が描かれた看板で、王都にいる人に聞けばすぐに教えてもらい、教えてもらった通りに進んで行くと、ギルドはすぐに見つかった。
「わぁ~大きいね。」
「ああ、さすが王都だな。」
(ギルドに聞けば勇者の事ってわかるのかな?いやいや下手な詮索はまだしないようがいいか。)
王都の冒険者ギルドはエベレスのギルドの3倍程の大きさがあった。中に入ると、びっしりと並ぶ受付の列。それぞれの場所には様々な冒険者が受付の人と話しているのが目に飛び込んだ。
「中も綺麗だね。」
(まるで銀行みたいだな。これで番号札なんかあったらまるっきり銀行だな。まあお金を預ける事もできるし銀行みたいな役割も兼ねてるんだろうな。異世界の不思議だな。エベレスで預けたお金を王都で引き出せるんだもんな。どんな不思議パワーだよって感じだ。)
「空いてる所に行って聞いてみようか。依頼もどんなのがあるか気になるしな。」
ヒカルとメイリーンは開いている受付の所に行って、そして・・・
「エルフ!?」
「あらっ?エルフを見るのは初めて?ふふふ。そうよ。かわいい冒険者さん。」
「ヒカル。いきなりどうしたの?」
(だってエルフだよエルフ。耳長いんだよ。そして美形!!超キレイだ。フリーダム連合国に行かないとエルフに会えないと思ってたからすげーうれしい。この分だとケモ耳さんもいるよな?ギルドの受付にはいないのかな~。気になる。気になるな~。あっ、やっぱり胸はあまりないんだな。スレンダー美人だ。いやいや全然OK。むしろドストライクだ。仲良くなりたい。)
「あの、冒険者のヒカルって言います。魔法学校に入る為にここにきたんですが、はじめてで何もわからないくて・・・その・・・色々教えてください。」
「ふふふ。良いわよ。お姉さんが教えてあげるわ。」
(もうヒカルったらあんなに目をキラキラさせて。確かにエルフのお姉さんは美人だけど私が隣にいるんですけど!!)
メイリーンはヒカルの態度が気に食わないので思いっきりヒカルの足を踏んづけた。
「痛ッ!!メイリ?」
「知らない!」
「あらあらかわいい彼女さんが怒っちゃったわよヒカル君。」
(いかんいかん。綺麗なエルフさんに心奪われてしまった。そうだそうだ。メイリと宿を聞きにきたんだった。)
「すいません。こっちはメイリーンです。俺達2人で今日王都に来たばかりなんです。おススメの宿とか、依頼の事とか教えてくれますか?」
メイリーンに謝り倒して、おススメの宿や依頼の事、魔法学校の事などを教えてもらったヒカルは、メイリーンの機嫌取りの為、美味しいケーキが売ってるお店向かった。美味しいケーキのお店は、受付をしてくれたエルフのティレスがこっそり教えてくれた。
「ヒカルはキレイな人を見るとすぐに目がキラキラするから気を付けてよね。」
「ごめんごめん。美味しいケーキおごるから許してよ。」
「それもティレスさんが教えてくれたんでしょ?」
「うん。まあそうなんだけどね。無事に王都に来たんだからお祝いも兼ねてね。」
「しょうがないからそれで許してあげるわ。」
(後でこっそりティレスさんにはお礼と、そして借家の事聞かなきゃね。ティレスさんって大人の女性って感じだからこっちの味方にしたらやりやすいかも。早めにその辺を決めておかないとね。寮より金額が安かったらヒカルもOKだすと思うし。)
魔法学校に入ると、色んな女性がヒカルにちょっかいを出す事を懸念したメイリーンは早めに動く事を決意するのだった。
ケーキがおいしくてメイリーンの機嫌は一瞬でよくなった。
(よかった。ティレスさんさすがだ。エルフとも会えたし異世界サイコーだな。やっぱり実物は違うよな~。いかんいかん。又ティレスさんの事考えてしまった。メイリに気付かれたらせっかく機嫌がよくなったのに台無しだ。)
「ヒカル?ティレスさんの事考えてたでしょ?」
(エスパーかよ!?えっ心読めるの?)
「いやいやそんなわけないじゃん。」
「そう?ならいいけど・・・」
(よかった~。ケーキ様々だな。意外な出費だけど、時々きてメイリの機嫌は取らないといけないからその分頑張ってお金稼がないとな。)
ケーキを楽しんだ二人はその後、ティレスから教えてもらった宿を取り旅の疲れをいやすのだった。
第20話 筆記試験を受けるヒカル
「ヒカル。早くしないと遅れちゃうよ。」
「わかってるよ。ちょっと待って。」
王都に来てからヒカルとメイリーンは、図書館での勉強とギルドの依頼を平行して行い、実力とお金を着実に伸ばして行った。
ヒカルは入学試験に落ちて魔法学校に入れなかったら死亡するので、必死に勉強した。ヒカルが合格しメイリーンが落ちたら一緒に魔法学校に行く事ができないので、メイリーンの必死に勉強した。
目標がある事で勉強もとても捗った。しかも王都の図書館には、過去の魔法学校の入学試験問題集も置いてあった。最後に解いた過去問集ではヒカルもメイリーンも8割以上の正解を上げる事が出来たので、二人とも試験に自信を持っていた。
「早く早く。遅刻して入学できないなんて嫌だよ。」
「そんな急がなくても大丈夫だよ。まだ2時間もあるじゃん。」
「もう。行くまでに何があるかわからないでしょ。」
(いやいやメイリさんや。魔法学校までは歩いて20分で着くじゃん。道中に何かがあっても余裕でしょ。1時間40分前についてどうするの?30分前とかならわかるけどさすがに早すぎないですか?)
準備を終えたヒカルとメイリーンはアルカディア魔法学校に向かった。魔法学校に着くと、すでに受験者がちらほらいた。
「ほらヒカル。全然早すぎじゃなかったでしょ。試験受ける人けっこういるじゃん。」
「本当だな。」
(なんでみんなこんな早いんだ。そんなに人気なのか魔法学校って・・・。まだ1時間40分前だよ。試験始まるまで何するんだよ・・・ってまあ最後の追い込みをするんだろうけど。)
「早く行きましょ。」
(よくよく考えれば早めに来たのは正解か。ここって貴族とかも来るもんな。人が少ない内に来た方が変に絡まれたりしないもんな。さすがに貴族がこんなに早く来るとは思えないし。)
ヒカルとメイリーンは受付で名前を伝え、受験票を受け取った。試験の申込はエベレス辺境伯がしてくれていた。ヒカルは330番、メイリは329番だった。
「そう言えばスクルドも来てるんだよな?会えるかな?」
「さっき受付で聞いたけど500人ぐらい試験受ける人がいるみたいだよ。運がよかったら会えるんじゃない?」
(折角ヒカルと2人で試験受けに来たのにスクルドに邪魔されないようにしないと・・・)
「500人か・・・たしか合格するのってAクラスからEクラスで30名だったよな。って事は150人合格するのか。」
(倍率3倍ちょっとか・・・意外にハードルが高いな。)
「一緒にAクラスに入るんだからね。つまらないミスしちゃダメだよ。」
「わかってるよメイリ。」
(そりゃこの試験に俺の生死が関わってるんだから必死にもなるよ。あれっそう言えばミッションって試験に合格したらクリアになるのかな?それともやっぱり入学と同時にクリアになるのかな?俺としては合格が決まったらクリアになればありがたいんだけど・・・)
受験票を受け取ったヒカルとメイリは筆記試験の会場に向かった。筆記試験会場は100名程入る大きな会場だった。受験番号301番から400番と書かれた会場に入り、机に330番と書かれた紙の置かれた席につく。329番のメイリーンはヒカルの前の席だ。
「まだ全然席埋まってないね。」
「試験が始まるまでのこの時間を有効に使わないと、忘れる心配がないから詰め込まないとね。ヒカルもそうでしょ。」
「まあ・・・」
(参加者がドンドン入ってくるな。この中に勇者はいるんだろうか?勇者っていうぐらいだから平民でイケメンさわやか野郎だよな?ああ勇者の名前も、どんな姿かも教えてくれてないって絶対ネメシス様のミスだよな~。そもそもアルカディアの魔法学校に来るかどうかもわからないし・・・)
アルカディア魔法学校の筆記試験は、現代学、歴史学、算学、魔法学、法律学の5つの分野で行われる。その後、実技試験だ。実技試験は魔法学校なので、もちろん魔法を使った試験だ。
魔力量を測る、魔力測定と、魔法の技術を測る的当ての2つの実技試験だ。学科と実技の総合で合格者が決まるのだ。定員数150名とは言ったが、一定水準以上の者が多いと定員以上の合格者が出る事もあるし、逆ももちろんある。
ヒカルは、入ってくる受験者を見ながら試験の開始を待った。何名か気になる人がいたが、合格するかどうかもわからないので、見るだけだ。
試験が始まり、現代学、歴史学、算学を終えた。ヒカルとメイリーンは宿で用意してもらったサンドイッチを食べながら午前の試験内容を話し合った。
「午前中の試験は算学以外は簡単だったわ。あれなら8割は合ってると思うわ。ヒカルはどうだった?」
「俺は算学は問題無し。現代学と歴史学もだいたいはわかったよ。まあ多分大丈夫だと思うよ。」
試験の合格基準は5割だ。5割以上正解できれば入学できる。だが、ヒカルとメイリーンはただの合格ではなく、Aクラスでの合格を目標にしていた。Aクラスは8割以上の正解と上位30名に入らなければ行く事ができないエリートクラスだ。
昼からの魔法学、法律学を無難にこなしたヒカルとメイリーン。メイリーンは特に魔法学が得意だったので、学科試験終了後のメイリーンの表情はとても明るかった。逆にヒカルは得意なのは算学だけだったが、他の科目も不得意ではないので、合格基準は満たしたと安堵していた。
筆記試験が終わり、ヒカルとメイリーンは実技試験の会場に移動したのだった。
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