第56話 新入生代表クリフ・ボールドです。
学校の門でアーサーとミリアに会い、ボールド家が久々に全員集まった。
「父さん、母さん、待ってました。クリフも今日は入学おめでとう。俺たちも入学式に参加するからミリアと待ってたんだ。」
「父さん、母さん遅いよ。早くいかないとみんなもう集まってるよ。」
「アーサー、ミリア久しぶりだな。ちょっと見ない内に大きくなったな。」
「アーサーちゃんはかっこよくなって、ミリアちゃんは綺麗になって、母さんも鼻が高いわ」
家族で話していると入学式の時間が迫ってきた。
「おっと、ゆっくり話をするのは後にしてクリフの入学式が迫ってるな。」
「うん。じゃあ行ってくるね。また後で」
「クリフちゃん。スピーチ期待してるからね。」
そこでクリフは家族と別れ新入生の所へ向かって行った。
「さて俺たちも向かうか」
アレク、サラ、アーサー、ミリアも入学式が行われる大講堂へと足を進めた。
高等学校の入学式は例年、人が一番入る大講堂で行われる。1000人以上入る場所で全体のイベントなどの室内で行われる行事はだいたいがここで行われる。
クリフは首席として新入生代表のスピーチがあるので、席に座らずに壇上の隅に座っていた。席から観客席・・学生やその親を眺めていると
(お~めっちゃ人がいる。これ全員、今回の学校の関係者かよ!!??)
(そういえば、学校がはじまるっていうのに僕って友達あまりいないな。セリーヌ、ミーケ、マッシュぐらいか。試験で助けた子とか絡まれたヤツとかはまだ全然仲良くないもんな。まずは友達100人できるかな?ってやつだな。)
入学式は順調に始まり、学園長の挨拶から始まり、陛下の祝辞、生徒会長の祝辞があった。
(生徒会長ってリッキー殿下なんだな。もしかしてアーサー兄かミリア姉かもって思ったけど、リッキー殿下は第一王子だし当然だろうな。ってなら新入生代表挨拶もセリーヌがすればよかったのに・・・王族ばっかりが学校の主要者になると他の貴族がうるさい。とかもあるのかな??政治はよくわからんな)
そんなこんなで入学式も終盤に差し掛かり、
「では最後に新入生代表挨拶です。今回の首席クリフ・ボールド君お願いします。」
(呼ばれたぞ。うまくまとまってないが、無難にこなすのと爪痕と残す。だけど目立ちすぎない。よし行くぞ。)
クリフは横に座る王族に挨拶し、教員達に挨拶しマイクに向かった。
「皆さん、初めましてクリフ・ボールドです。今回は運よく首席を取る事ができましたので新入生を代表して挨拶させて頂きます。
まずは、陛下をはじめと知る王国関係者様、今回無事に入学式を迎える事ができました事を感謝いたします。
更にリッキー殿下。生徒会長として学校での事を生活などとても参考になりました。
さて、この学校での4年間は非常に大事だと思います。それはここでの4年間の学びが将来につながり、王国の繁栄へと繋がっていくからです。
私自身まだまだ若輩者なので、皆様のご指導をどうぞよろしくお願いいたします。
最後になりましたが、私自身4年間首席を維持する事をここに宣言します。気に食わない人はどうぞ挑戦してきてください。
これで新入生代表挨拶を終わります。ありがとうございました。」
(宣言はやりすぎたかな?でもいざしゃべって見ると、なんか前世の当たり障りない挨拶しかできなかったからこれぐらい言っておかないと記憶に残らないよな??)
会場は拍手で包まれていたが、一部からは鋭い目を向けられていた。
入学式は無事に終わり解散になった。
クリフは家族が集まっている所に向かっていった。
「父さん、母さん、アーサー兄、ミリア姉おまたせ」
「クリフ。スピーチよかったぞ。宣言は・・まああれくらいは良いだろ。」
「クリフちゃんも男の子なんだからあれくらいはね。カッコよかったわよ。」
「クリフならあれくらいやっても、クリフだしな。って感じだな。」
「何かあったらお姉ちゃんが助けてあげるから何でも言ってよ。」
「ありがとう。それでこれからどうするの?王城に行くの?」
「いや。まだ時間があるからどっかで食事でもしよう。家族で食事をするのは久しぶりだからな。食事が終わったら王城に行く。」
ボールド家は王都で有名な食堂に行き、家族で食事を取った。
「そういえばアーサー兄かミリア姉が生徒会長をしてるかと思ったんですが違ったんですね。」
「ああ。生徒会長はリッキーがしてるんだ。俺とミリアも生徒会には所属してるよ。リッキーはさすが王族ってだけはあるよ。実際に俺たちよりも強いしな。」
「へぇーそうなんですね。」
(リッキー殿下の方がアーサー兄やミリア姉より強いのか。って事は今学校で一番強いのはリッキー殿下って事か)
「クリフは学校で何を学ぶか決めているのか?」
アレクがクリフに問いかける。
「そうですね。家はアーサー兄が継ぐだろうから、僕は、将来冒険者としてやっていきたいので、冒険関係の勉強をしたいと思ってます。剣術とか魔法とかですね。後は色んな所に行ってみたいので、地理とか各地の特色とかを学んでみたいですね。」
「えっ俺はクリフが父さんの跡をつぐんだと思ってたんだけど??だってクリフの方が俺より強いだろ?」
「いやいやアーサー兄様。長男が継ぐのが普通でしょ。僕はアーサー兄に押し付け・・いやアーサー兄に継いでもらって僕は自由に生きようと思ってましたよ。」
(領主とか忙しそうだし自由がないし勘弁だよ。いやな事はアーサー兄に押し付けるに限るよな。)
「押し付けるって・・・そっか~。まあクリフが自由にしたいなら考えて見るか・・ミリアが婿を取って領主を取るって方法はどうだ?」
「私も兄さんが領主を継ぐのが筋だと思いますよ。私に押し付けないでください。」
「おまえら・・・誰も領主やりたくないのか。まあ気持ちはわかるが・・・。ただクリフ何があるかわからんから、貴族の事とか内政も学んでおけよ。俺みたいに別の領地を治める可能性とかもあるんだからな。」
(たしかに父さんの言う事は一理あるな。まあ学校がはじまって、どんな授業があるか聞いてから決めればよいか)
家族団らんの時間はあっという間に過ぎていった。食事を終えたボールド家は王様への謁見の為、王城へ向かって行った。
第57話 勇者は聖剣を持っているらしい・・まじか!?
家族で食事を終え、王城へ向かうボールド家の一同。そのまま王城で陛下に謁見した。といっても王様の前でアレクが一言二言話すだけだったが。
(謁見って何のためにあるか訳わからないよな。まあ前世の天皇陛下とか内閣総理大臣に会う感覚なんだろうけど)
謁見が終わったクリフ達は奥のテーブルに座り王族の面々とテーブルを囲んでいた。
王族側は王様のマテウス、王妃のマリア、第一王女のヘレン、第一王子のリッキー、第二王女のセリーヌが並んでいる。
対して、クリフ側は、父のアレク、母のサラ、兄のアーサー、姉のミリア、クリフと並んでいる。
「こうして家族全員で顔を合わすのは初めてだな。今は公式の場じゃないから気楽に話してほしい。」
マテウスが公式の場じゃないから気楽に話せと周りに言う。
「それはありがたいわ。それにしてもマリア久しぶりね。ヘレンちゃんもリッキー君もセリーヌちゃんも大きくなってみんな王族っぽくんってたくましくなったわね。」
「ええサラも久しぶりね。手紙も良いけど直接会う事もなかなかなくなったから会えてうれしいわ。それにアレクとサラの子供達も噂は王城にも聞こえてくるから私もうれしくなるわ」
サラとマリアが二人でおしゃべりしている。二人は学生の頃からの親友らしい。アレクはマテウスと話しをしている。
「アレク。あれから魔の森はどうだ?魔王が誕生してからそろそろ何かしら動きがあると思っているんじゃが?」
「そうだな?魔王が動き出したっていう噂は聞かないな。ただ、魔の森の魔物のレベルは年々上がっているように感じるな。何かしら関与しているのかもしれないな。領都の近くは間引きしてるから今の所何があっても対応はできるが、魔族が攻めてくるとどうなるか今の所はわからない。が正直な所だな。勇者の方はどうなんだ?魔王討伐の為に関して何か情報は入ってるのか」
(おっ勇者の話題が出たぞ。現在の勇者の状態は気になるぞ)
「帝国は情報をなかなか渡して来ん。全てが入ってくるわけではないからこちらの密偵の情報が主になるが、正直あまり期待はしておらん。というのも密偵が持ってくる情報は悪い内容ばかりだ。力があるのをいいことにまわりに暴力は振るう。綺麗な女性を見ると自分の者になれと声をかける。わかりやすく言うと学生時代にいたパイロンみたいなやつだ。」
「なるほど、それはわかりやすいな。でもパイロンか~。それはかなり厄介なヤツだな。」
(誰だ?パイロンって?)
「父上。パイロンっていうのは誰なんですか」
みんなが気になってた人物についてリッキーが問いかけた。
「パイロンっていうのはね。私達が学生時代にいた侯爵家の子供でね。自分が大貴族の子供だからって常に周りに3,4人の取り巻きを連れて行動してる悪ガキだったの。学校では綺麗な女の子には権力使って強引に自分の女にしようとしててね。当時は私もマリアもうんざりするぐらい近づいてきてたわ。」
「そうだったわね。その度にマテウスとアレクがパイロンから助けてくれてね。当時のマテウスとアレクはモテモテだったのよ。」
(どの時代にもそういうヤツっているんだな。どう考えても権力振りかざすやつよりも真面目に頑張ってるやつの方がモテルだろ。)
「まあ権力振りかざしたり、弱いモノいじめするヤツは昔からゆるせなかったからな。マテウスも同じような考えだったから気が合ったんだろうな」
「あたりまえじゃ。民あっての王族であり王国だ。貴族たちの中でもそれがいまだにわかっておらんヤツが多くて困るわい。」
「まあそんなそんなヤツだったんだけど、パイロンは力もないのに権力だけでいばってたから学生時代に魔物に殺されたのよ。魔物の討伐実習でダンジョンの奧まで一人で先走っちゃってね。」
死んでしまった事をきいたクリフ達は言葉を失いその場が静まり返った。
「でも帝国の勇者は、そのパイロンって人と違って力はあるんでしょう?」
クリフは勇者の力の内容が知りたかったのでそれについて触れて見た。
「そうじゃな。帝国が戦闘面はかなり厳重に隠しているから現在の実力はわからん。じゃが、文献では魔王を討てるのは勇者の称号を持った者のみ。と記載されておる。勇者の称号を持つ者が聖剣と聖なる魔法で魔王を討伐した。というのが言い伝えじゃ。」
(やっぱり聖剣はあるのか。という事は聖剣は帝国に保管されていたって事か。)
「なるほどな。魔王を倒すためには勇者が必要だ。その為に帝国に協力はしたいがあくまで協力で、帝国の下には着きたくないって感じだな。で勇者は当てにならないからうちのクリフに期待しているって感じだろ?」
「さすがアレクは話が早い。つまりはそういう事だ。」
「えっ?僕?」
(今の話に僕に期待する所ってあったかな??)
クリフが首を掲げていると・・・
「今の帝国は信用できん。勇者の力を隠す所とか、領土を広げようと他国に積極的に侵略している所とかな。はっきり言って帝国が勇者を抱えてるとそれだけで色々無茶を言ってきそうだ。今の所はまだないがな。そして勇者自身の言動を見ると、勇者に頼らずに王国で行動しないと国ごと帝国に侵略される可能性もある。そこで王国内で力のあるモノを探していたが最近はクリフ君の噂がすごいからな。この機会にお前らを読んで全員で話をしておこうと思ったわけだ。」
そうしてクリフに関しての話題を中心に話し合いは進んでいった。
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