第43話 大賢者ミスティ・アルテリア
高等学校の入学試験中のクリフ、午前中に学科試験を自己採点満点で終え、午後の的当ての試験では青い炎のファイヤーボールを放ち的を破壊した。見る人が見るとすごさがわかるのでこちらも高得点が期待できる。
最後の模擬戦が今から始まるのだが、クリフと対峙しているのはこの学校の学園長だ。クリフは名前も知らないが、実は王国一の魔法使いで大賢者ミスティ・アルテリアと言えば、本にもなってるほどの英雄である。魔力も王国でただ一人1万を超えている。
学園長のミスティと魔力2,000のクリフの模擬戦は注目を集め、周りには受験生が取り囲んでいた。
「クリフ君。君の実力が知りたいんじゃ。全力でかまわんのじゃよ。では模擬戦開始じゃ。」
学園長の号令とともに模擬戦が始まった。
「はい。よろしくお願いします。でもなんで僕だけ試験官が学園長なんですか?ファイヤーボール。」
クリフはファイヤボールを放ちながら学園長の様子を見た。
「魔力測定で学園創立以来2,000もの魔力を出したのはお主が初めてじゃ。興味があっての」
とミスティは軽くファイヤーボールを交していく。
「これならどうだ。ウインドカッター」
クリフはファイヤーボールよりも早い風魔法に切り替えて学園長に攻撃していく。
「クリフ君はそんなもんじゃないじゃろ。」
ミスティはウインドカッターを軽く避けて、ファイヤアローを連発してきた。
「ウォーターシールド」
クリフは水の防護壁を発動してミスティの魔力を相殺する。
「まだまだ。これならどうじゃ。」
ミスティはファイヤーボールを百発程周囲に浮かべてまとめてクリフに放ってきた。
(大量のファイヤーボールだな。ウォーターシールドだけじゃ防げないか。)
クリフはウォータシールドとともにアースシールドを展開してミスティの魔法を防いだ。
(よし。防げたぞ。でもどうしよ~。ここで上級魔法とか連発すると周りの人に色々バレるしな~)
上級魔法を使わず、初級と中級魔法でミスティとやりあってると、
「どうした?そんな魔法じゃ儂に傷をつける事も出来んぞ。」
ミスティにそう言われたので、クリフがまわりを見渡しながらどうするか考えていると、
「なるほどのぉ。周りが気になるか。では、ほれっ。これでどうじゃ。」
ミスティは模擬戦一体を見えない壁で囲った。周りからクリフとミスティは見えなくなった。もちろん、クリフとミスティからも観客は見えない。
「安心せぇ。魔法がまわりに被害が出ないように結界をはったんじゃ。まあ見えないようにしたのはお主が安心して魔法が使えるようにじゃ。それに声も届かないようにしたぞ。じゃから魔力1万以上の実力を発揮しても周りにはバレんぞ」
魔力の事を指摘されクリフは足を止めた
「えっなんの事ですか?」
「隠さなくてもバレバレじゃ。最後に出した水晶は魔力1万を超えると測定不能と出るのじゃ。鑑定して魔力が2,000って出るのは、多分じゃが、ステータスを隠蔽しておるじゃろ。」
(げっ!!バレてるじゃん。これはどうしようもないな)
「バレてましたか。ならしょうがないですね。ファイヤーストーム。」
クリフは上級魔法をミスティに放った。
「おっようやく本領発揮じゃな。」
ミスティはファイヤーストームを交しながら
「次はこっちから行くぞ。ウォーターミスト。フレアアロー。」
ミスティは霧を作って、どこにいるかわからなくしてから上級火魔法のフレアアローを放ってきた。
(やばっ。これは防御できないかも。霧でまわりが見えないし転移使っても大丈夫か。転移)
クリフは転移を使って、ミスティの後ろにまわり、ミスティの首に手を手刀の形で
ちょんと触った。
「学園長、チェックメイトです。」
「お主何をした。いつの間に背後にまわった?」
ミスティは驚き顔で顔を振り向かせた。
「秘密です。僕の勝ちでいいですよね。」
クリフはドヤ顔でミスティに言った。
「儂の負けじゃ。儂が負けるなんていつぶりじゃ。しかもお主の魔法。多分じゃが転移したじゃろ?」
クリフの転移は速攻でバレていた。
「さあどうでしょう。これ以上は観客も待ってくれませんのでこの辺で終了で良いですよね。」
「ああ。聞きたい事が多々あるが、これは試験じゃったな。わかった。とりあえずクリフ君は合格決定じゃ。じゃあ結界を解くぞ」
ミスティが結界魔法を解除し、まわりの見えるようになった。
周りの観客がざわざわしているとミスティが声を上げた。
「クリフ君との模擬戦は終了じゃ。結果は合格発表でするのじゃ。」
ミスティは模擬戦の内容は伝えなかった。しかし
「どうなったんだ?」
「いやいや学園長に勝てるわけないだろ。大賢者だぞ」
「でもクリフってやつも魔法連発して学園長の攻撃を防いでいたぞ」
「あいつは学園長レベルって事か」
「大賢者レベルって学校で学ぶ事あるのか?」
「あいつと同学年って俺たち世代の黄金世代ってやばいな」
「規格外ってやつだな。」
(周りの反応がやばい・・・かなりやり過ぎた感があるぞ。早く帰りたい。)
ミスティとの模擬戦を終えて、周りに囲まれるクリフだったが、面倒な事になると思い、マッシュやアリスもいたが、声を掛けずにダッシュで学園を後にした。
当然ながら、クリフがいなくなった試験会場では、クリフの噂で持ち切りだった。
その後の合格発表の時に気づくのだが、クリフは大賢者の再来と言われていた。
第44話 大賢者の再来の噂はすぐにまわりに広がって行った
入学試験が終わった学園長室ではミスティが二人の学生を待っていた。
「失礼します。学園長。何か御用でしょうか」
入ってきたのは、クリフの兄のアーサーと、姉のミリアであった。
「急に読んですまんのう。今日入学試験でクリフ君と模擬戦をしてのぉ。お主達の弟じゃろ。話を聞いておこうかと思っての。」
「クリフと模擬戦したんですか?クリフは大丈夫でしたか?」
「いや大丈夫も何も、あやつはきっと儂より強いぞ。」
ミスティは模擬戦の内容と感想を二人に伝えた。
「えっ学園長より強いんですか。クリフがですか?まあクリフは大分規格外ですからね。私よりも魔法に詳しいし、アーサーよりも剣もうまく使いますからね。」
「的当てでも青いファイヤーボールを放ってのぉ。あんな魔法は初めてみたぞ。」
「まあクリフですからね。あいつは昔から何でもできたんで、今更驚きませんよ。」
その後、ミスティとアーサーとミリアはクリフについて色々話していった。
「クリフ君はすごい力をもっておる。この王国の為になればもちろん良いのじゃが、この王国の敵になれば、かなりの脅威じゃ。その辺はどうかのぉ」
「学園長。クリフはそんな事は絶対にしません。あいつは俺の自慢の弟ですよ。」
アーサーはミスティの言葉に強く反論した。
「すまんのじゃ。そんなつもりで言ったわけじゃないんじゃ。うむ。わかったのじゃ。クリフは規格外じゃから学校では色々支えてやってくれ。なんせ、大賢者の再来と噂されておったからの~。孤立する可能性もある。」
「もちろんです。私達の弟ですから。でも学園長安心してください。クリフは昔から人懐っこいですから。きっと学校でも多くの友達を作ると思いますよ。」
アーサーとミリアが学園長室から出て、一人になったミスティは
「大賢者の再来か~。あやつはきっと儂を軽く超えていくじゃろ。あの時、背後に現れたのはきっと転移の魔法じゃな。古代遺産の転移の魔方陣はあるが、まさか一個人が使えるとはの~。
それに魔力量もきっと儂よりも多い。秘密と言っておったが、他にも色々隠してる魔法があるはずじゃ。
儂も大賢者とよばれて長いがクリフ君みたいな異才は初めてじゃ。正直儂もクリフ君に魔法を教わりたいくらいじゃな。
どうしたものかの~。ゆっくり話して色々教えてもらうのが一番じゃが。まあこの部屋に呼んで根堀葉堀きいて見るのが一番じゃな。」
クリフの知らない所でのじゃロリのハーレム候補が一人増えているのだった。
~同時刻、王城では~
ミスティからクリフの入学試験の報告を受けて、
王様のマテウス、王子のリッキー、王女のセリーヌが話をしていた。
「ミスティから聞いたのじゃが、クリフ君が入学試験で色々やらかしたらしいの」
「はい。私も入学試験を受けておりましたが、魔力測定では測定不能で、的当てでは青い炎を的を壊して、模擬戦では学園長と戦ったみたいですよ。さすがクリフ様ですね。」
「クリフ君の事はアーサーとミリアからよく聞いているよ。自慢の弟だってね。さすがに試験はやりすぎだと思うけど。まさか学園長が負けるなんてね。僕も一度手合わせしてみたいな。」
「リッキー、手合わせするのは良いが魔眼は使ってはならんぞ。魔眼の存在を知る者はごくわずかにしておかねばならない。他の国に知られてみろ。対策されでもしたら大変じゃ。将来痛い目を見るぞ。」
サリマン王国の王族はみな、何かしらの魔眼を持っている。マテウスは鑑定の魔眼で鑑定の上位版だ。マテウスの魔眼では隠蔽しているステータスも見る事ができる。
セリーヌは相手の感情がわかる魔眼を持っている。相手がどんな感情を抱いているかがセリーヌにはわかってしまう。邪な考えや嫌らしい考えなど、セリーヌにはわかってしまうため、かなりの人見知りで男性恐怖症になっている。クリフだけが例外で感情が見えない為に普通に接する事が出来ている。
リッキーは数秒先の未来が見える魔眼だ。戦闘においての優位性はさることながら、暗殺や毒殺など、数秒先が見えるリッキーには通用しない。王族としてとても良い魔眼を有している。
そしてマテウスが言うように魔眼の存在を知る者は少ない。王族以外では学園長のミスティやクリフの両親のアレクとサラ、その他数名ぐらいだ。そのほかの者には存在を隠している。これは他国との優位性を保つ為である。魔眼の持っている者は非常に少ない。スキルを持っている事が分かれば対策されてしまい優位性が崩れてしまう。
「わかっております、父上。今後学校で会う事もあるので機会があればですけど、クリフ君とは仲良くしたいと思ってます。それにセリーヌも熱を入れているみたいだし、兄としてクリフ君を見極めないとね。」
「お兄様、クリフ様は強いし、かっこいいですね。お兄様と戦っても、きっとクリフ様が勝つと思いますよ。なんせ大賢者の再来ですからね。」
「セリーヌよ。今日の入学試験でクリフ君はかなり有名になった。セリーヌの言うように大賢者の再来と言われているぐらいだ。他の貴族もきっとクリフ君に近づいてくるだろう。うかうかしてると取られてしまうぞ。」
「お父様。大丈夫です。私はきっとクリフ様を射止めて見せますわ。」
クリフの知らぬ間に、王城ではセリーヌがクリフを射止める決心をし、次期王様のリッキーがクリフと仲良くするために動いていくのであった。
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