第35話 奴隷がダメならスライムだ。
奴隷商で門前払いをくらったクリフだったが、大好きな魔法の本を探すために気持ちを切り替えて、古本屋に来ていた。
「お~本がたくさんある。異世界で本は貴重なのが定番だけど、さすが王都だな。これだけあったら、見たことない魔法書とかスキル書も数多くあるだろ。片っ端から読んでみたいぞ。」
異世界で本は貴重だ。なんせこの世界には印刷する技術がない。本は著者が手書きしたモノとそれ以外はそれを複写したモノしかない。複写するのにも時間がかかるので、同じ本一つとっても多く存在しない。なのでこの世界の本は基本、古本もしくは古書になる。そして数が少ないので希少である。つまり・・・高いのである。
目をきらきら光らせ、本を眺めていると古本屋の店主が遠目から睨んできた。貴重なんだから手荒に扱うなよ。といった視線で睨んでくる。
(中を確認しながら選びたいけど、本をパラパラめくるのは難しそうだ。わかってるよ。貴重なんだろ?でも、中も見ないで本って買えないだろ??ジャケ買いしろって言ってもジャケットにはタイトルしか書いて無いし・・・まあ、店主の目が光ってるからタイトルから何冊か選ぶか。でもこの本っていったいいくらするんだ?)
おそるおそる僕は椅子に座ってこっちを睨んでいる老人の店主に本の金額を訪ねて見た。
「すいません。この本っていくらするんですか?」
「その辺りの魔法書とスキル書は1冊金貨20枚じゃ。本は貴重じゃからな。ひやかしなら帰ってくれよ。お前さんみたいな子供には買うのは早いじゃろ。」
(金貨20枚!?たけぇ~。1冊20万って事だよな・・・。3冊買ったら今日の報酬が全部なくなるぞ・・・まだアイテムボックスに魔物はたくさんいるけど、今日出して驚かれたばっかりだから、すぐには換金できないし・・・)
僕は2冊買う事を決めて、店主に伝えた。
「魔法書かスキル書を2冊買おうと思います。何かおススメはありますか?」
と僕は金貨を40枚店主に渡して、おススメを聞いた。
お金を持ってる事を知った店主は、手のひらを返したように少し表情が柔らかくなり、
「そうじゃの~。お主の適正とかがわからんからどれが良いのかはわからんが、どんな本を探してるんじゃ?」
(たしかにそうか。適正がわからないと勧めようがないよな。)
「そうですね。色々勉強してるので希少な魔法書なんかがあれば読んでみたいですね。」
「そうじゃの~。なら召喚魔法とか隷属魔法、テイムのスキルとかは希少じゃぞ。」
(お~!!!召喚魔法!?精霊とか悪魔とか召喚できるのか~。隷属魔法は奴隷契約とかができるのかな~。あとテイム!?スライムテイムしてみたい。奴隷商で断られたけど、魔物とか精霊とか夢が広がるな~。)
「興味があるので、召喚魔法の本とテイムのスキル書を買いたいと思います。」
「ありがとよ。金貨40枚じゃ。でもどちらも本を買ったからって身につくもんじゃないぞ?それでも良いのか?」
この世界に四大属性の魔法書やスキル書は多数存在しているが、読めばその魔法やスキルが使えるという訳ではない。人には適正があり、適正通りの本であれば、読んでいれば身につくが、適正外の本に関しては何度も読んで内容を熟知しなければ身に着ける事はできない。
逆に言えば、何度も読んで熟知すれば適正がなくても魔法やスキルは覚える事は可能だ。どれだけ努力が必要かはわからないが・・・
「大丈夫です。知らない魔法とかスキルに興味があるんです。身につけれるかはわかりませんが、がんばって勉強してみるつもりです。」
「子供なのにしっかりしておるの~。大事にしておくれよ。ほいっ。これがその本じゃ。」
「ありがとうございます。又、お金が貯まったら身に来ます。」
クリフは老人店主から召喚魔法の魔法書とテイムのスキル書を受け取り、宿屋にもどって行った。
(今日は魔物を狩る予定を辞めて、家で勉強しよう。テイムを覚えてスライムを仲間にしてみたい。スライムをテイムするのは定番だよな~)
宿屋に戻ったクリフは早速テイムのスキル書を開いた。スキル書にはそのスキルの名称から効果。使い方、習得の仕方などが書いてある。ようはテイムのスキルを持ってる人が他の人向けに書いた本。みたいな感じである。
「なるほどな~。まあ異世界小説モノで魔物をテイムするのは定番だから書いてある内容はわかるけど、魔物と心を通わせるって言ってもな~。
起き上がり仲間になりたそうな目でこちらを見ている。とか体験してみたいけど、本当にそんな事できるのかな?魔法なら全適正があるから覚えられるとは思うけど、魔法以外は適正があるわけじゃないからな~」
クリフはテイムをスキル書を読みふけって、どうやってスライムをテイムするかひたすら考えた。
「よし。早速明日試してみよう。やってもないのにあきらめるのは異世界らしくないよな。異世界モノならあたって砕けろ精神だな。」
クリフはスキル書を熟読して、眠りについた。その日の夢ではスライムと一緒に冒険する夢を見たので、起きたらクリフのテンションは最高に高かった。
第36話 スライムゲット。名前はもちろん・・・
朝からテンション高いクリフは、ご飯を食べたら早速、スライムが出る草原に向かった。
「よし。まずはスライムを探そう。いるかな~」
クリフは気配察知でスライムを探した。
「おっいるいる。まずは1匹の所に行ってみよう。」
スライムを見付け対峙するクリフ
「さて、いつもは魔法か剣で瞬殺してたけどどうしようかな~。剣でも魔法でも一撃で倒してしまうから~。まずはゲームみたいに、弱らせながら倒して見るか」
クリフはその辺に落ちていた木の棒を拾い、スライムに攻撃をしていった。スライムに物理耐性があるとはいえ、今のクリフでは木の棒で攻撃してもスライムなど瞬殺である。殺さないように手加減しながらスライムと戦闘をこなしていった。
だが、
「やっぱり無理だな。何匹倒しても、死んだら仲間になるわけないよな。そりゃそうだ。死ぬ前に仲間になりたそうな雰囲気を出してくれなきゃ無理だよな・・・」
「じゃあ次はひたすらテイムって唱えてみるか~。周りに人がいないから大丈夫だよな。」
次にクリフはスライムを弱らせてからひたすらテイムと唱えて、スライムを仲間にしようとした。弱らせてはテイムをして
「仲間になれ~。テイム・・・仲間になってくれ~。テイム・・・仲間になってください。テイム・・・一緒に冒険しようぜ。テイム・・・。仲間になってください。お願いします。テイム・・・」
スライムはうんともすんとも言わなかった・・・
「無理だな。仲間になってくれる気がしない・・・こんなとこ誰にも見られなくてよかった。魔物に向かってひたすらテイムしてる姿見られたら、痛いヤツって思われるよな~」
「なら次は食べ物で釣る作戦だな。野菜、肉、魔物とスライムって雑食だから食べ物を上げてなつきそうなヤツがいたらテイムを試してみるか~」
次のスライムを見付けて、まずは野菜をあげてみる。犬に餌を上げる感覚だ。クリフはスライムに攻撃されても痛くも痒くもない為、そばまで近づいても害はない。
「お~食べてる。食べてる。って食べてるのか?取り込んでるだけのような気がするが・・・どうだ?ちょっとは僕になつきそうか??」
野菜を取り込んだスライムを見て見るが・・・
スライムは何もなかったかのように「ピキーっ」と僕に襲い掛かってきた。
「え~。野菜効果ないじゃん。」
襲ってきたスライムを軽くいなして、次は肉を手に持ってみた。
すると、
「おっスライムが止まった。肉がほしいのか~」
僕は手に持っている肉を左右に動かした。動かした肉に合わせてスライムが動いているように見える。
「目がないから、肉を気にしているかわからないけど、何か動いているし、肉が気になってるよな。これは」
先ほどと同じように近づいて行った。スライムからの攻撃が無かったので肉を与えてみた。
すると、今度は
「ピキッピキッ。ピッキー」と何やら喜んでいる??ような動作をみせて肉を取り込んで行った。
(おっこれは感触良いぞ。取り込んでも今度は襲ってこないし、これはいけるか)
「仲間になってくれ。テイム・・・・・」
ダメだった。
僕とスライムには何も変化はなかった。
「なんでだよ~。異世界ならここでテイムできるのがテンプレだろ~。テイムってこの世界に存在しないんじゃね~の。これでダメならどうしろっていうんだよ~。才能がないのか?才能がないのか?適正がないとやっぱりダメなのか・・・」
僕はテイムを覚えれなかった敗北感でその場に腰を下ろした。
「あ~もう。今日はもう終わりにしよっ」
そのまま大の字になって、休憩する事にした。
ちなみに先ほどのスライムはお腹がいっぱいになって満足したのか、クリフに襲いかからず、その場を離れて行った。
「あ~テイムは失敗だな。まあまだ1日目だから挑戦していく価値はあるけど、召喚魔法の魔法書もあるしそっちも勉強してみるかな。もうすぐ学校の試験も始まるしその勉強もしないといけないから、次は試験が終わってからだな。」
暖かい草原で大の字になって、しばらくボーッとしながら色々と考えこむクリフだった。
「よしじゃあお金の為に、森で少し魔物を狩ってギルドに売却しに行こうか。」
テイムはあきらめ、森で魔物を狩ろうと動き出したクリフ。
だが、その時森の入り口でスライムとゴブリンが闘ってるのが見えた。
「あれっさっきのスライムかな~。なら見殺しにするのもちょっとな~」
クリフはダッシュでかけより、ゴブリンを瞬殺。剣で真っ二つにした。スライムは急いで逃げるかと思ってたが・・・近づいてきてクリフの足元で身体を寄せてきた。
「おっ。どうした・・・・ってこれはもしかしたら・・・・
テイム!」
すると、スライムと何かつながった気がした。
「テイムで・き・た。やったぞ。テイムできた。スライムと繋がったぞ。なんかスライムの考えがなんとなくわかる気がするぞ。」
テイムが成功した。スライムは相変わらず足元に寄ってくるので、クリフはそのスライムを両手で持ち上げた。
「よろしくな。スライム。ってスライムはおかしいか~。名前がいるよな・・・定番ならスラリンだけど、スラ吉、いやスラリンか。でも今後、進化とかして人型になって女の子とかになったらスラリンもおかしいし。って人型に進化するって決まった訳じゃないけど・・・」
ハーレム妄想が止まらないクリフだったが、
「よし。決めた。スイムだ。これなら大丈夫だ。スイムよろしくな。」
スライムのスイムはスイムと呼ばれた瞬間。身体を振るわせた。
「お~。気に入ってくれたか。よかった。よかった。」
スイムは名前を気に入ってくれたようだ。
なんとなくそんな気がするのはテイムでつながっているからであろう。
クリフはようやく1人目の、ハーレムパーティ??、生涯のパートナー??、冒険者仲間??を得たのだった。
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