第33話 規格外のFランク冒険者再び
ギルドに入ると素材を持った冒険者で溢れていた。
(そうだよな~。朝は依頼を探す冒険者でいっぱいで夕方からは素材を売る冒険者や依頼の達成報告をする冒険者がいて、お金を受け取って酒場で飲む。が定番だよな)
クリフはそんな事を思いながらギルドでブラブラしていた。エリーさんはその見た目から看板受付嬢で人気がある。なので、エリーさんの受付は順番待ちで長い列ができていた。
(どうしよっかな。エリーさんの顔見たいから待ちたいけど、これはなかなか順番がまわってこないよな~)
と突っ立っていると
「依頼の報告ですか~。私でよければ伺いますよ。」と眼鏡をかけた受付嬢に声を掛けられた。
「あっありがとうございます。どうしようかと思ってまして。それにしても行列がすごいですね。」
「ああエリー先輩は人気がありますからね~。今日はいつもにまして並んでますね。」
(やはりエリーさんは人気なんだな。あの見た目であんなにやさしく話されたら男ならみんな落ちるよな~」
「ではこちらに来てください。依頼の報告は何ですか。素材の売却ですか?」
「はい。薬草採取の依頼を受けたのでその報告と、採取してる間に魔物を狩ったのでそれを売却したいです。」
「わかりました。手に持ってないのはマジックバックに入ってるんですか?」
「はい。よくわかりましたね。そうなんです。」
「まあ、手ぶらで依頼報告に来る人はいないですからね。それにしてもその年でマジックバックを持ってるなんて、もしかして貴族様ですか?」
(なるほど。たしかにそうだ。マジックバックもこの年じゃ珍しいよな。ちょっとこれは考えないと・・・)
「まあそんなとこです。でも親からもらっただけなんで、気軽にクリフと呼んで下さい。」
「わかりました。ではクリフさんと呼ばせてもらいます。私の事はミルクとお呼び下さい。」
(ミルクさんか~。可愛らしいでど、エリーさんと比べるとな~。いや。エリーさんとだって何かある訳じゃないんだし、女性との出会いは全て気合を入れて対応しないと。どこで何があるかわからないからな。)
「ミルクさんですね。よろしくお願いします。素材けっこう多いんですが、どこに出したらいいですか?」
「このテーブルに出してくれていいですよ」
「えっ!?でもこのテーブルには収まらないと思いますよ。」
(テンプレ展開ではあるが、やっぱりいきなりテーブルよりも多くの素材を持ち込む人っていないよな~。)
とそんな事を考えていると
「薬草と魔物ですよね。大丈夫ですよ。ここにお願いします。」
と受付嬢のミルクは今までの常識で、そんな事言っても大丈夫だろうと気軽にテーブルを指した。
「わかりました。では」
クリフはマジックバックから薬草を1,000束出して、その横にゴブリンを次々に出していった。
「はい。お願いします。って・・・えっ・・・薬草がこんなにたくさん。えっっ。ゴブリンも。えっと、クリフさん・・・。クリフさん!」
受付嬢のミルクに言われ僕は素材を出す手を止めた。ちょうどテーブルからあふれる所だったので丁度よかった。
「クリフさん。これ今日全部取ってきたんですか??こんなにたくさん?」
「はい。がんばりました。これで半分ぐらいです。」
(半分じゃないけど、このセリフも言ってみたかったんだよな~。)
ミルクと素材のやり取りをしてると、横からエルフのエリーが現れテーブル一杯の素材を見て、
「ミルク。どうしたのこれ。テーブル一杯じゃない。他の冒険者も何事?ってみんな見てるわよ。」
「せんぱ~い。この人に素材を出してもらったんですけどすごく多くて・・・」
「こんなに1日で持ってこれる訳ないで・・・ってクリフ君じゃない。じゃあこれはクリフ君が持ってきたの?」
「はい。がんばりました。」
「・・・・わかったわ。ここは変わるからミルクはあっちを対応して頂戴」
とエリーさんが受付を変わってくれた。
(ラッキー。エリーさんが対応してくれるぞ。)
「それでクリフ君。こんなに大量の素材を出されてもここじゃ対応できないから、薬草は裏の倉庫で、魔物は解体場の方に出してもらっていいかしら?」
「はい。大丈夫です。」
「じゃあこっちよ。」
エルフのエリーに連れられて、薬草を1,000束倉庫において、魔物を200体解体場に置いてきた。受付にもどり、再度話をする。
「で、どうやってあんなにたくさんの薬草と魔物を持ってきたの?」とエリーさんに尋ねられたので
「えっっと、森を探索してたら薬草がたくさんある所を見付けまして、そこで集めました。同じく森を探索してたらゴブリンとかスモールラビットとかが現れたので討伐しながら集めてたら気づいたらあの数になってました。」
クリフはてへっ。って感じでおちゃめに言ってみた。
「てへっ。じゃない!。もうホントに~。そんなに取ってきてケガはないの?」
「はい。全然大丈夫です。」
エリーとクリフの話し合いをまわりの冒険者がひそひそしながら見ていた。
「あんなちいさいガキが薬草1,000束だって?」
「お前1日で薬草どれぐらい取れる?」
「80束ぐらいじゃねぇか」
「魔物も200体狩ったらしいぞ」
「20体狩れれば御の字だよな~」
「あいつ昨日ゴードンを1発で気絶させたやつだよなぁ」
「史上最恐のFランクらしいぜ」
「あれでFランク・・・末恐ろしいな」
「規格外だな。あまり絡まないようにしないと」
(いやいや聞こえてるから。もうちょっと抑えればよかったかな~。相場がわからなかったから多いとは思ってはいたけど、多すぎたな。)
反省したが・・・もう遅かった。
「クリフ君。聞こえてると思うけど、周りの冒険者が言ってる事が普通の事なのよ。少しは自重しなさいね。今日すぐにあの量の素材の査定はできないから、明日の朝、又来てくれる?その時に査定の話をするわ」
「はい。わかりました。」
と、周りの冒険者が避けて空いた所を歩き、僕は宿屋に向かった。
(チートはしたいが面倒事はいやなんだよな~。)
とある種、不可能な事を思いながら眠りについた。
第34話 史上最速でのランクアップはもはやテンプレ
一夜開けて、ギルドへ向かう前にいつものように獣人のミーケに挨拶をした。
「ミーケおはよう。」
「クリフ君おはよう。今日も朝から出かけるの?」
「うん。ギルドにね。少しでもお金を稼ぎたくてね。」
「勉強は大丈夫なの。試験まであまり日がないよ。」
「うん。まあちょこちょこやってるから試験は大丈夫だと思うよ。」
うそだ。前世の記憶があるので、実際は試験は余裕だと思っていた。
「余裕だね~。私は勉強しないと危ないから今日も勉強だよ~。」
「応援してるよ。がんばってね。じゃあ行っています。」
「いってらっしゃい」
ミーケと別れてギルドへ向かった。
(ミーケともだいぶ仲良くなったな。ハーレムにケモ耳枠ははずせないからな~)
ギルドについて、早速エリーさんの元へ向かった。
「エリーさん。おはようございます。昨日の査定が終わったと思ったので朝から来ました。査定って終わってますか?」
「あ~。クリフ君。おはよう。終わってるわよ。ちょっと待ってね」
とエリーさんはお金が入ってるであろう革袋を出してきた。
「え~と。薬草がピッタリ1,000束で10束で1銀貨だから、全部で金貨10枚。魔物の分がゴブリンが100体。ウルフが60体、スモールラビットが40体で、解体料を差し引いて合計で金貨50枚、合計で金貨60枚よ。」
「お~。そんなになったんですね。ありがとうございます。」
この世界の通貨は
鉄貨1枚・・・約10円
銅貨1枚・・・約100円
銀貨1枚・・・約1,000円
金貨1枚・・・約10,000円
白金貨1枚・・・約100,000円
虹貨1枚・・・約1,000,000円
である。
(金貨60枚って事は60万円!?一日でそれはすごい!?。これは毎日やったらすぐに億万長者だな。)
「それと冒険者カードを出してくれる?」
(おっこれはもしかしてランクアップか~。テンプレだよな~)
~ちなみに昨夜クリフが帰った後の冒険者ギルドでは~
「マスター、クリフ君が又、やらかしました。」
「何!?どうしたんだ?何があった?」
「今日、薬草採取の依頼を受けたんですが、一日で1,000束と魔物を200体も持ってきたんです。」
「それは又・・・規格外だな。早めにランクを上げた方がいいな。」
「でもまだ登録したての11歳ですよ?」
「そうなんだが、実力がある者は早々にランクを上げた方がギルドの為になるしな」
「たしかにそうですね。規定の量に達してるのでEランクにあげるんでいいですか?」
「そうだな。いきなりDランクとかだと子供だから目を付けられて危ないかもしれないからな。」
「もう遅いとは思いますけど・・・」
「たしかにな。じゃあ俺は陛下にこの事を伝えてくるわ」
ギルドマスターと副ギルドマスターのエリーにより、今日の出来事も早々に王様に伝わっている事をクリフはまだ知らなかった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
言われるままに冒険者カードを出すクリフ
「クリフ君は既定の依頼数をこなしたから今日からEランクよ。ちなみに2日でFランクからEランクへの昇格は最速よ。今までの最速は1週間ぐらいだからね」
(お~。最速記録更新だ。やったね。はやくSランクになってみたいな~)
「ありがとうございます。うれしいです。Eランクになると何かあるんですか?」
「う~ん。Eランクはまだ初心者クラスだから特にかわらないかな。Dランク、Cランクで一人前の冒険者で、Bランクからは上位のランカーね。まあクリフ君ならすぐになると思うからがんばってね、」
「はい。ありがとうございます。」
「それで、今日も依頼受けるの?」
「はい。あっでも、今日はお金が入ったので、買い物して時間があったら依頼を受けようと思ってたので、常設の魔物討伐をしようと思ってます。」
「そうなのね。わかったわ。それじゃあゴブリンを狩る事があったら丸ごとじゃなくて討伐証明の左耳だけにしてくれる?ゴブリンって素材になる所がないから丸ごともってこられると解体も大変だし、クリフ君の稼ぎも悪くなるしね。」
「そうなんですね。わかりました。わざわざありがとうございます。」
ギルドを出たクリフは買い物に出かけた。
「ようやく自分でお金を稼いだぞ。いざという時の為にためておくのも一つの方法だが、色々気になるものもあるから、この機会に色々見ておきたかったんだよな~。」
「武器、防具だろ。ポーションとかも揃えたいし、あとは魔法書。魔法についてはまだまだ知らない事もあるだろうし、あとは、あっ奴隷商とかも行ってみたいな~。」
武器屋や防具屋を見て回ったクリフだったが、あまり気にいるモノがなく、早々に店を出ていた。
(鑑定で性能がわかるのは良いけど、ここの武器屋も防具屋もパッとしないな~。素材とか渡して作ってもらうのが一番かな。か、別の所に良い武器屋とか防具屋があるの~。ギルドでおススメを聞いておけばよかった。大きいからって理由で来てみたけど失敗だったな。)
量販店のような所に足を運んだクリフだったが、金額は安いが質はあまりよくない店だった。ランクの高い冒険者は素材を元に武器や防具を作ったり、専属の武器屋や防具屋がある事をこの時のクリフはまだ知らなかった。
(奴隷商は入れずに断られるし、一体何のために治癒魔法のレベルを上げたかわからないよ。)
奴隷商では門前払いをくらっていた。当然だろう。11歳の子供が1人で奴隷商に行っても相手にされるわけがない。
(奴隷に関しては今後どうするか考えよう。焦らなくても学校を卒業したら成人するしそれからでもいいか。)
と次の目的地である魔法書を探して王都をブラつくクリフであった。
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