第71話 聖剣って僕にも作れるかな??
クリフは図書館で勇者の聖剣について調べていた。
(聖剣って帝国から与えられたんじゃなくて、スキルで呼び出すんだな。勇者の称号を得たと同時に聖剣召喚みたいなスキルも覚えたって感じかな。って事はどこにいても聖剣は呼び出せるよな。)
「クリフ様、真剣に本を読まれてますけど何の本を読んでるんですか?」
クリフが顔を上げると目の前にセリーヌが居た。
「ちょっと勇者について調べててね。帝国が情報をあまり出して来ないって陛下が言ってただろ?だから昔の勇者について調べてたんだよ。調べてみたら驚いたよ。勇者って聖剣召喚のスキルを持ってるみたいだ。聖剣が勇者の強さの秘密の一つである事は確かだろうね。」
「クリフ様は勉強熱心なんですね。この前も・・・」
クリフが学校に入学してから3か月が経っていた。あれから様々が学科を受けながらクラスでの仲を深めていったクリフはセリーヌは当然として、クラスメンバーとは全員と気軽に話せるようになっていた。親密度はまだまだだが、朝おはようと言うと周りがおはようと返してくれる仲にはなった。
研究会も順調だった。クリフは一つの研究会に決めずに色々な研究会に参加する事にしていた。中でも魔法研究会の成長はすさまじい。学園長から直々に魔法研究会のメンバーに無詠唱魔法について教えてほしいと言われ、魔法研究会のメンバーで無詠唱魔法を使う為の理論や研究、イメージトレーニングを行った結果。簡単な魔法は研究会のメンバー全員が無詠唱魔法で魔法を使う事ができたのだ。3か月で早くも成果が出たのでクリフの評判もうなぎ上りだった。
もちろんクリフ自身の鍛錬もかかしていない。今は図書館で勇者について調べていたが、学校がない土曜日日曜日はギルドの依頼を受けたり、ダンジョンに行ってレベルを上げたり、魔の森まで転移して奥まで探索したりと休みを利用して積極的に自分の鍛錬を行った。休みの度にいなくなるので、セリーヌから何度も怒られていた。
(まあ休日は自分の事で精一杯だから、学校内ではセリーヌとの時間を作っていかないとな。)
「正直、僕は勇者を信用してないからね。帝国が情報を出してない事といい、勇者の悪い噂が多い事といい、もしかしたら帝国が攻めてくる。とか勇者が敵になる可能性だってあるかもしれない。その為には情報は武器になるからね。」
(予知夢の事はセリーヌには話さない方がいいだろうな。絶対心配するだろうし・・・)
「クリフ様の言う事もよくわかりますわ。それにしても聖剣召喚ですか・・・クリフ様も魔法はイメージってよく言ってますし、イメージしたらクリフ様も聖剣を作り出せるんじゃないですか??」
「えっ!!??」
(たしかに!?僕は今まで勇者の聖剣が相手だったらどんな武器でも負ける!と思ってた。けど、セリーヌの言うように魔法で剣を作り出したら勇者の聖剣に対抗できるんじゃ。夢の中の武器はたしか普通の武器だったと思うし魔法で剣が作り出せたらそれだけで夢と違う結果になりそうだぞ。)
「セリーヌ。ありがとう。たしかにそうだよ。自分で魔法はイメージだ。ってよく言ってるのに全然その発想がなかったよ。でもセリーヌのお陰でイメージできそうだよ。さすがセリーヌ。」
クリフは興奮してセリーヌの手をとって、大きな声で御礼を伝えた。
ただ、ここは図書館である。大きな声で話した事を注意されるとともに、セリーヌの手を握って話している事に気づいたクリフは顔が赤くなるのだった。
「お役に立てて良かったです。」
セリーヌも又、クリフに手を握られうれしかったが、図書館の人に注意されて周りの視線が集中すると恥ずかしくなり顔が赤くなるのだった。
「なんかみんな見てるし外に出ようか・・・」
「そうですね。」
外に出ると、ユウリとマークが待っていた。この3か月でセリーヌと一緒に居る事が多くなったので、ユウリとマークはクリフがいる場合気をきかせてセリーヌがクリフと二人っきりになるようにしていた。ただ、そうはいってもずっと二人っきりにするわけではなく、図書館などの建物の前で待機しているぐらいだ。
「ユウリ、マークお待たせ。前も言ったけど、2人も中に入ればいいのに。」
「いえ、セリーヌ様の邪魔をするわけにはいきませんので」
「じゃあセリーヌ、僕はさっきのをちょっと考えたいから寮に戻るね。」
「はい。お役に立ててうれしいですわ。頑張ってください。」
「セリーヌの案だからね。絶対成功させてみせるよ。」
学生寮に戻ったクリフは部屋で剣召喚について考えていた。
(さて、まずはどんな剣にするかだよな。聖剣を持った勇者に僕の剣は折られたから不壊、絶対に壊れない剣をイメージするのは必須だろ。あとは切れ味か~。聖剣っていうぐらいだから聖剣は聖属性を持ってるんだろうな。魔族とか悪魔とか魔物が相手なら能力がアップするとかかな。その辺はなくてもいいか。有名な剣だとエクスカリバーとかデュランダルとかラグナロクだけど、名前だけで性能っていまいちわからないんだよな~。魔剣にしてみるか。ぼくの魔力を吸って力を増す。みたいな。いやいや邪悪な感じがすると僕が悪者だ。それはできないな。)
クリフは一晩、剣召喚について考えていた。考えた末に・・・・望んだ剣は召喚できなかった・・・
第72話 イメージするためには実物を観察しなくちゃね
翌朝、学校に行くとセリーヌがすぐに近づいてきた。
「クリフ様、昨日はどうでしたか?」
「セリーヌおはよう。ダメだったよ。剣を召喚する所まではできたんだけど今のままだったら普通に剣を買って使った方が強そうなんだよな~」
「そうなんですね。残念です。」
「あっでもそこまで残念って訳でもないんだよ。剣を召喚する事はできたからね。後はもっとイメージしないといけないなって思ってね。だから街の武器屋とか鍛冶屋を見て回ろうと思ってるよ。今までは自分で装備する事だけを考えて見てたからね。自分で召喚する事を考えて見てみると違った見え方がすると思うんだよ。」
「たしかに見方を変えると新しい発見がありそうですわね。でも残念です。今日は午後から王城で仕事がありますので、クリフ様についていく事ができないですわ。」
「仕事なら仕方ないよ。ポロンでも誘ってみるよ。あいつミラクル商会の跡取りだしついでに魔道具とかも見て見たかったからね。」
(ポロンさんなら安心ですね。誰か別の女性を誘われたらどうしようかと思いましたわ。)
「ポロン。おはよう。ポロン今日の午後って空いてる?ミラクル商会で武器とか魔道具とか見せてほしいんだけど。」
「クリフ君おはよう。今日は大丈夫だよ。おっありがとう是非見に来てよ。気に入るモノがあったら買って行ってよね。」
「ああ。もちろんだよ。じゃあ午後、ミラクル商会を案内してもらってもいいかな?」
「もちろん。じゃあお昼が終わったら門で待ち合わせでいいかな。」
「わかった。じゃあ午後にな」
午前の授業が終わりポロンとクリフはミラクル商会へ来ていた。
「やっぱりミラクル商会はでかいよな~。さすが王都一の商会だね。」
「父さんががんばってるからね。それよりもクリフ君は武器を見たいんだよね。」
「ああ、剣を見せてほしいのと魔道具とかも見て見たいな。」
「わかった。こっちだよ。」
ポロンに案内されて武器を一通りみせてもらったクリフ、その後は魔道具を見せてもらった。
「さすがミラクル商会。何でもあるね。」
「求められるモノは何でも提供する。何でもできるミラクル商会!だからね。」
(実際に剣をたくさん見れたのはよかったな。剣のイメージがだいぶできたぞ。それに魔道具もいい気分転換になった。冷蔵庫とエアコンなんかもあったしな。けっこう文明のレベル高いよな。テンプレだったら異世界人が広めるって感じだけど、昔の異世界人が広めたのか?それともこっちの人の知識が生み出したのか・・・気になる所だな。)
「ポロン。今日はありがとう。すごく参考になったよ。それとごめんな。ポーションとか日用品みたいなちょっとしたモノしか買えなくて。」
「気にしなくて大丈夫だよ。買ってくれただけでもありがたいんだから。又いつでも言ってね。」
(ポロンってすごいいいやつだな。こんな感じだからミラクル商会も繁盛するんだろうな~)
クリフはミラクル商会が王都一の理由が少しわかった気がして学生寮に戻った。
(よし。昨日の続きだ。剣の形をイメージして、目標はけっして折れない剣だ。矛と盾の矛盾の話で絶対に折れない剣っていうのは作成するのは実質不可能と言われてるけど、ここはファンタジーの世界だ。きっとできる。)
それから、今日も晩までひたすら剣のイメージを続けると・・・・クリフはイメージに近い剣の召喚を成功させた。
「やった~!できたぞ。神剣デュランダルだ!」
できた剣は光り輝くオーラをまとった剣だった。神剣。と言われても納得するような雰囲気があった。
「明日はこれの試し切りだな。セリーヌにも成功した事を伝えて御礼を言わなきゃな。」
魔法はイメージだ。をしっかりと実現させてクリフは今日はとても気分よく眠りにつけた。
~一方その頃帝国では~
「皇帝陛下。次の王国の階段の時に俺を連れてってくれよ。何でも王国の王女様はすごく綺麗だって聞いたぞ。一目見たいんだ。頼むよ。」
(勇者である俺が誘えば、王国の王女も首を立てに振って俺に寄ってくるだろう。なんせ俺は勇者だからな。魔王を倒せる唯一の男だ。王国としても帝国と事を構えたくないだろうし、そういう面からも王国の王女を俺に渡す事は王国にとってもメリットがあるはずだ。)
「そうだな。一度連れて行ってもいいかもしれんな。王国に勇者を紹介しておけば、今後の交渉もやりやすいだろうしな。」
「さすが皇帝陛下、話がわかるぜ。じゃあ頼んだぜ。」
(よしやったぞ。ここの王女はガードが堅いからな。無理やり手を出したら俺の立場が弱くなるから無理やり手に入れる事もできなかったからな。それに王国の王女はすごく綺麗って聞く。こっちの学校もつまらないし寄ってくる女にも飽きてきたから王国に手を出してハーレムを広げてやるぜ。俺の称号と聖剣があれば敵なしだな。)
(は~。あいつの相手は疲れる。力があるのはわかるが性格が最悪だからな~。娘に手を出そうとしてたかと思えば、次は王国の王女か・・・どうしたもんか。国際問題にだけはならないようにしないとな。勇者が帝国に属している。って点だけしか今の所メリットがないからな~。魔王を倒したら後は用済みなんだが・・・)
帝国の勇者は次の王国と帝国の会談に参加する事が決まった。クリフと勇者が出会うのはもうすぐだった。なぜなら皇帝と勇者が話した2日後に、帝国一同は王国との会談に向けて出発するからだ。
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